School of Limitations 5

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筆者(無禄)が自営業を立ち上げた頃、マレーシアで見事に騙された、略称ASというマレー人ビジネスマンの話がありました。今回は、20年以上前の記憶を掘り起こして、その出来事を振り返ります。

前回のお話はこちら

ASは、大企業の中で中間管理職が社外で使う「諜報部員」のような仕事をしていました。当時のマレーシア企業文化では、彼のような人を「ランナー (runner)」と呼んでいました。

要するに、彼は「スパイ」「詐欺師」、そして「悪徳ビジネスマンの手下」という立場の人物であり、関わると痛い目に遭うタイプでした。

彼らの活動は、主に人と人との意思疎通によって成り立ち、英国植民地時代から伝承された世襲的なノウハウがあるようです。非常に狡猾で、ずる賢い彼らに、日本の真面目なサラリーマンは簡単に騙されてしまいます。筆者もその一人でした。

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合法的「騙し」の技術

ASは、雇い主の企業から「違法にならない人の騙し方」を訓練されていたようです。筆者も、彼の懇切丁寧なやり取りや「口車」に乗って、数度にわたり金銭を巻き上げられるという経験をしました。

彼らの騙し方は巧妙で、取引情報の提供や当事者との引き合わせは、一見すると通常のビジネスと変わりません。実際、筆者も大手マレーシア企業の重役と引き合わせてもらい、実際に商談の機会がありました。

彼らが持ち込む「取引」は、いわゆる「優先的な仕事の手配」で、東南アジア的な「便宜を図る」ことを前提としています。大手企業が海外の技術や機器を購入する際、その紹介や見積額の聴取などを行い、取引を決定するのです。

こうした国外の設備やサービスの購入は、通常「競争入札」が条件となっています。しかし、20年以上前のアジアでは、予算と売り手の価格がバランスしていれば、面倒な入札手続きは省かれ、裏取引で購入や発注が決められていました。そして、形式的な競争入札が行われ、手を組んだ売り手が落札する仕組みが整えられるのです。

こうした裏取引は違法ですので、買い手の企業は売り手に秘密を守らせるための保険をかけます。非合法な成功報酬や、正式契約に出てこない裏金の取引が行われ、売り手はその対価として見えない金銭取引に合意するのです。これが彼らの保険でした。

ASのようなランナーは、売り手と買い手の仲介をし、裏取引をまとめます。取引が成立すると、不正な成功報酬が関係者に分配されますが、売り手からはその仕組みが見えません。唯一確かなのは、買い手の企業ではなく、ランナーに裏金が現金で渡されるということだけです。こうすることで、売り手も買い手も企業としては、裏取引に「関わっていない」立場に逃げ込めたのです。

実現しなかった商談

筆者は約3年間、ASと連絡を取り合いましたが、彼から持ち込まれた裏取引の案件は2〜3件に過ぎず、すべて不成立に終わりました。

商談自体は、実際にマレーシアの大手企業の管理職と会い、取引条件も公表されている内容と一致していましたが、ASは常に売り手の情報や資金を事前に要求してきました。そして、集めた情報や金銭は返ってくることはなく、結果として騙されたのです。

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ASは謝罪しましたが、結局は情報が悪用され、金銭はASやその先の誰かの懐に入ったのです。当時の企業側の管理職や外国企業の関係者は、今ではみなさん引退したり、病死されたりして、当時のやり取りを記憶している人はいません。

今となっては、商談が一つも成立しなかったことで筆者は救われたと感じます。もし一件でも成立していたら、筆者はマレーシア国内の不正取引業者として常にブラックメール*を受ける立場に陥り、その後も裏取引に関与し続ける羽目になっていたでしょう。

あるいは、ASの仕事は、もとより、商談の成立などとは無縁だったのかもしれません、筆者は彼との交際費や、企業の重役の接待費を負担していましたから、AS本人は金の心配をせずにランナーらしき仕事を演じていたのかもしれません。

*アジア圏にとどまらず、違法行為に手を染めた人間は、常にそのことを知っている他人から「暴露」を武器にゆすられたり利用される傾向にあります。これらは、全て実在した「ブラックメール」のノウハウです。

学びの場としての地球

筆者の経験から言えば、こうした東南アジアの裏取引文化は、日本企業にとって完全に無視できるものではないが、信用して利用するべきものでもありません。

国際入札では、買い手国の権力闘争も絡み、取引は複雑な過程を経て決定されます。ランナーが暗躍することは20年前では一般的でしたが、日本企業の熟練経営者たちは「またか」という態度で適当に付き合っていたようです。

日本国内のような単一民族による信用取引の環境とは異なり、人心を読み取れない人間の限界を利用した虚構の応酬がビジネスとなる世界では、誰もが騙されるリスクを抱えています。

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現代の霊媒師や臨死体験者の言葉を借りれば、こうした世界は、宇宙の中でも最も低次元の牢獄であるとされています。(別途紹介している米国のドロレス・キャノンや日本の石井数俊の評価)筆者もその中で芋虫のように這い回っていたに過ぎません。

しかし、この地球環境を学びの場として捉えるなら、制約された状態で生活し、仕事をすることがいかに困難かを「学ぶ」場所として捉えることができるでしょう。いわば、「制約の学びの場 (School of Limitation)」です。

20年以上、あらゆるメディアや言語で、高次元世界の情報に触れてきましたが、どの情報源も同じように、伝えているのが、高次元世界においては、「自分の思いや魂胆を隠せない」という環境です。つまり、制約だらけの地球環境だけが「例外」だというのです。

最後まで参照いただき、ありがとうございます。

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