案内士の道:続・過去問との格闘

千夜一夜

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通訳案内士国家試験の準備を始めた当初、私は日本史と日本地理の過去問の難しさに愕然としましたが、どうやら難問にショックを受けた受験者は、私だけではなかったようです。

この記事を公開している2026年から遡ること10年以上前。2015年12月発行の情報誌『AERA』に、非常に興味深い記事が掲載されていました。タイトルは、『問題がニッチすぎる? 難問奇問珍問の国家資格 通訳案内士』。

その内容を要約しますと、当時の試験の過酷さがよく分かります。 現役で通訳翻訳業務に従事している40代の男性ですら、2015年度の筆記試験を初めて受けた際、その難問・奇問を目の当たりにして「戦意を削がれた」と憤っておられました。

そもそもの話、試験範囲の膨大さは圧倒的です。例えば、知床を案内したい受験者も屋久島を案内したい人も、等しく「箱根の複雑な乗り換え経路」を正確に答えられなければならない……といった、実務との乖離は否めません。

語り草となっている2015年度の出題例

当時の試験がいかに「個性的」だったか、いくつか例を挙げてみましょう。

  • 【一般常識】 温水洗浄便座の一般世帯における普及率(2014年調査)を問う問題がありました。 正解は「75%」ですが、もはや統計データの暗記勝負です。
  • 【日本地理】 箱根登山鉄道の箱根湯本駅から芦ノ湖の遊覧船乗り場まで、正しい乗り換え順を四択から選ぶ問題。 (正解は:箱根湯本―強羅―早雲山―大涌谷―桃源台―箱根町)
  • 【日本地理】 瀬戸内しまなみ海道のルート上に「存在しない」観光地を選ぶ問題。 正解は「大和ミュージアム(呉市)」ですが、他の選択肢(大山祇神社、耕三寺、平山郁夫美術館)がどの島にあるかまで把握していないと自信を持って答えられません。

私が個人的に最も衝撃を受けたのは、「札幌市とほぼ同じ緯度に位置する海外の都市はどこか?」という設問です。ローマ、パリ、北京、ロサンゼルスの中から「ローマ」を選ばせるものや、東京圏に次ぐ人口規模の大都市圏として「ジャカルタ」を答えさせるものもありました。海外の都市との比較分析も「試験範囲である」といった印象が残る問題でした。

これらは専門書を読み込んでいなければ、到底太刀打ちできない「鬼問」といえるでしょう。

絶滅しつつある奇問と、新たな罠

しかし、2015年から2025年までの11年分の過去問をすべて体験してみた結果、幸いなことに、こうした「重箱の隅をつつくような奇問」はほぼ絶滅しているようです。

最近では、問題文に脈絡なく外国の都市が登場したり、家電の普及率を問われたりすることはなくなりました。出題の内容が、より訪日観光客の関心に寄り添ったものへと改善されてきた証拠でしょう。

ただし、決して油断はできません。形を変えた「罠」は今も健在です。 例えば、世界遺産に関する設問で、さりげなく「文化遺産」の内容に「自然遺産」を紛れ込ませて受験者を惑わせたり、富士五湖の並び順(西から東へ)など、地図を完全に暗記していなければ即答できない問題も出題されています。

また、離島に関する知識も欠かせません。 日本の最北端(択捉島)は有名ですが、最東端の「南鳥島」や最南端の「沖ノ鳥島」がともに東京都に属していることなどは、試験でも問われています。

「そんな細かい知識、外国のお客様から質問されるだろうか?」と疑問に思うこともありますが、これが現実の試験です。過去の傾向をしっかりと把握し、たとえ難問であっても戦略的に頭に入れておく。その積み重ねこそが、合格への唯一の道なのだと痛感しております。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

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